自然栽培、食、生命、地球のこと

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ハミングバード

おいしさの理由を持つ

北海道、十勝の開拓農家として、折笠の先祖がここを切り拓いたのは約100年前。
農場は代々受け継がれ、私で4代目になる。父の代、機械化が進み化学肥料、化学農薬を駆使し生産性を高め始めた時代に、地力の衰えに気付き始めた父は、「開拓時代の豊かな土地を取り戻したい」という想いから、肥料を大量に必要とするビートを植えるのをやめ、当時では珍しい緑肥を導入し安定した収穫が見込める、じゃがいもを生産する農場へと転向させた。目指したのは「安心・安全・自立した農業」だ。
そんな父が有機、無農薬、販売開拓への取り組みを始めていたのは40年以上昔になるが、自然栽培は始めてから10年、木村秋則さんが、わざわざここ(北海道幕別町)を訪ね、父と共鳴し合ったのが13年前だ。

木村さんと折笠さん木村さんというと「奇跡のリンゴ」を思い浮かべるせいか、どこか神がかったイメージがあるように感じる人が多い。だが自然栽培に関しては全く違う。こと農業の話になれば、木村さんの指摘はいたってシンプル、そして的確です。
木村さんに初めて会った時の名言
「自然を理解できなければ自然栽培はできない」
「困ったときは自然を見ろ」
「栽培する作物の原産地調べろ」
木村さんの畑やリンゴの木を化学のメスを初めて入れた弘前大学の杉山先生が「木村さんは人並み外れた観察力の持ち主だ」といったのもうなずけます。

折笠農場の作付面積はじゃがいも・大豆・緑肥などを中心に75ヘクタール。自然栽培も特別栽培も両方やっています。全面積75haのうち28ha、全体の約30%が自然栽培!
大規模で継続できる自然栽培に挑戦中です。

自然栽培は、まだまだ新しい分野。
分からないことが多く、無肥料、無農薬で栽培し続けると何が良くて何が悪いなどの基準さえないのだから、逆に使わないと見えてくるもの使うと見えなくなるもがよくわかります。
近年、帯広畜産大学土壌学の先生、微生物学の先生、北海道農業研究センターの微生物の先生、じゃがいもの育種の先生方に無肥料無農薬の栽培に興味を持っていただけて、また相談にも乗っていただいています。今年から科学的にも自然栽培を紐解く研究を行ってもらっています。先生方も過去の通説を覆す様な事実に驚いている部分もありますが、肥料・農薬を使わないでの継続には疑問もあります。不可能ではないという気持ちを持ちながら自然栽培なりの自然循環を、土壌学、微生物学、昆虫学、作付品目、品種、緑肥など色んな角度で見つめ、その土壌に合った自然栽培をしていきたいと考えています。

一方で、自然栽培であればそれだけでいいのか。自然栽培ならすべておいしいか。というとそんなことはない。「自然栽培はおいしくない」と消費者が感じれば、この段階で本当の意味での普及はない。私は「おいしさの理由を自身がしっかりと持つこと」が大事だと考えている。例えば、じゃがいもを例にあげると、うちの農場では、毎年、実験的に30~35品種植えるようにしている。もちろん、大変手間のかかる作業になるが、品種を沢山植えて、その中からどの品種がおいしいのか、病気に強いのか、生産者自ら「選ぶこと」「食べてみること」は最も大事なことだと思う。実際、農協の技術者たちは毎年これをやっている、競争に勝つためにおいしいものを提供するために。
自然栽培も同様、これをやらないと違う意味の継続性がない。
おいしくない自然栽培なら売れない、誰も買わないのだから。

じゃがいも 肥料を使うじゃがいもにも、自然栽培のじゃがいもにも腐るものがある。
鼻を近づけてみても自然栽培のじゃがいもはほとんど臭くない。一方で肥料を使ったじゃがいもは嗅ぐのに耐えられない臭さだ。7年くらい前からこの違いに気づいてはいたが、去年あらためて「なんで化学肥料を使ったじゃがいもは臭いんだろう」と疑問に思って、臭いのを我慢してずーっと嗅いでいたらハッと気がづいた。春先に化学肥料を撒くときのイヤな匂い!その匂いだと気づいた時に背筋が凍った気がした。何故というと、腐ったときには気付いていて、生の時には気付かない人間の感覚っていうのは怖いと思ったからだ。
もし生のときに気付いていれば決して口にすることはないだろう。アトピーなど、食べ物で過敏に反応する子供たちっていうのはこういうところに反応しているかもしれないと感じた瞬間だった。

北海道十勝
大産地の役割は、一般栽培、有機栽培、特別栽培、自然栽培、それぞれのカテゴリーで、いろんな作物を揃え。そして消費者に選んでもらう。
この役割を果たすには、各栽培方法にふさわしい品種がなければならない。まず安定した供給ができる品種を整えながら、平行して土作りをやっていく。
最近、様々な産業で成功を収めているお隣、韓国や他の農業先進国でも、やはり「品種と土作り」。フォーカスしているのはこの2点だ。
自然栽培で継続していける土づくりと有機栽培や自然栽培に向く病気に強くおいしい品種が必要です。

80年以上前にひいおじいさんが植えたナシの木。
ほかにも小桑の木、クルミの木がある。
どういう想いでひいおじいさんが
植えていたんだろうと、ときどき考える。
北海道十勝の自然栽培の仲間たちで
植えているリンゴの木は1,400本。
多くの人に自然栽培で
実った時の楽しさっていうものも感じてほしい。

折笠 健(おりかさますらお)
1968年、北海道幕別町生まれ。
幕別高校を卒業後、札幌商工会議所付属専門学校を経て株式会社折笠農場(代表:折笠秀勝)入社。大阪営業所勤務を経て、北海道に戻り従事。(株)折笠農場取締役。平成16年 (有)ベルセゾンファーム代表取締役木村秋則自然栽培研究会・北海道会長。趣味はスノーボードやスノーモービル。妻、長女と共に幕別町在住。