ハミング通信

農家・生産者の物語

稲本さんの田んぼには、生きものたちが来るジャンボタニシを味方に変えた50年

自然栽培で50年のキャリアを持つ稲本薫さんの田んぼには、手書きの看板がいくつも立っています。「アサリ貝を復活させたい」「生物多様性を取り戻したい」──農家さんの性格が出た文章で、思わずクスッと笑ってしまいます。でも、メッセージの内容自体は真剣な想いに満ちています。

看板に「アサリ貝を復活させたい」と書いてあるのは、県の大半の米農家が、農薬取締法で使用禁止されているにもかかわらず、害虫のジャンボタニシを駆除するために「椿油かす」を30年間も使用しており、その魚毒成分が大量に海に流れ込んで、特産のアサリ貝が採れなくなってしまっている状況を、なんとかしたいという想いです。

実は稲本さんは、50年前に画期的な除草方法を確立しました。稲作の天敵と言われているジャンボタニシに「雑草だけを食べさせて、稲は食べさせない」という方法を思い付き、天敵を味方につけたのです。稲本さんの水田、10ヘクタールの雑草対策は、ジャンボタニシがやってくれています。

農薬を使わないから生態系が循環し始め、稲本さんの田んぼにはアオサギ、シラサギ、ツバメ 、ツグミなどがやってきます。田んぼにいろんな生き物がいるからです。

自然栽培というと、肥料・農薬を使わない農業というところだけにフォーカスが行ってしまいがちですが、どんな農家さんでも、かならず実現したい想いがあります。まずは「最初に想いありき」なのです。

人と自然を食でつなぎ、伝える。

読んで、感じて。
次は、食べてみてください。
言葉でわかることには、限界があります。
体で感じることから、始まります。