ハミング通信

時代観・コラム

自然野菜のハーモニースープカレー屋と農業女子の「まずい発言」

札幌の住宅街に、ひっそりと、看板も出さない地味なスープカレー屋があります。メニューは3種類しかなくて、一番安いので2,500円くらい。初めてお店に入った時は「えっ、カレーで3,000円 ?」とビビりました。無愛想なマスターが一人できりもりしていて、お行儀のいい常連さんが黙 々とカレーを食べていました。

「これはやばい店に入っちゃったかな」と思いながらカレーが来るのを待っていたら、出てきたカレーを食べて、また驚く。食べ始めたら会話なんてしていられない、それくらい絶品でした 。スープはすっきりしていて、スパイス以外は北海道の野菜と鶏、こだわりの塩しか使っていないという。いろいろな野菜のハーモニーが表情を変えて、季節の変化が楽しめる。野菜が変わるたびにハーモニーが違うから、また行きたくなる。野菜の味がピュアで、カレーだということを忘れてしまうくらいです。

似たような話で、ヘルシーフードが大好きな農業女子と一緒に有名シェフのフレンチレストランに行ったことがあります。食事を終えて、料理研究家や食品業界の面々が口々に「さすがですよね」と話しながら駅まで歩いていたところ、その農業女子がぼそっと「びっくりした」というのです。何がそんなにびっくりしたの?と聞くと、「料理がまずくてびっくりした」。素材の味を楽しめる料理がまったく出てこないので、季節も感じられないし、つまらない時間だったと。

おとなたちは農業女子をなだめながら、世の中にはいろんな種類のおいしさがあると必死に説いていました。でも本当のことを言うと、みんな心の中で「一本取られた」と思っていたに違いありません。

おにぎり一つだって、素材さえよければ、米・塩・梅干し・焼きのり、もうこれだけで、プロ顔負けの一品になる。自然の摂理でじっくり育った野菜は、それだけでおいしいし、料理すると美しく調和する。一度この沼にはまると、なかなか抜け出せません。

人と自然を食でつなぎ、伝える。

読んで、感じて。
次は、食べてみてください。
言葉でわかることには、限界があります。
体で感じることから、始まります。