自然栽培、食、生命、地球のこと

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ハミングバード

自然栽培の仲間達

僕らの会社は北海道の十勝にあって、畜産用微生物飼料の「アースジェネター」他、畜産農家さんをサポートする製品を提供しています。
自分の仕事って、なかなか説明するのが難しいんだけれど、簡単に言うなら「牛、豚、鳥たちのお腹の調子をよくして、快適に毎日を過ごさせてあげること」かな。つまり発酵による微生物の整腸作用で、家畜が健康的で且つ気持ちよく過ごせる畜産環境を作ること。

一緒にサハラ砂漠を緑にしよう!

最初はね、この世界(微生物を扱う仕事)に入るなんて、まったく考えてもいなかった。
この世界に入ったのは、たまたま宮嶋さん(共働学舎新得農場 宮嶋 望さん)に会ったから。
宮嶋さんが、登校拒否した人達なんかを受け入れ、農業を通じて教育しようとしていたのは、以前から知っていた。
本人に会ったことはなかったけれど、凄い人だなと思っていた。たまたま、自分の知り合いが宮嶋さんと同じ母校の自由学園で、その話を聞いていて遊びに行った時、たまたま宮嶋さんがいて、そこで話をして、一緒にやろうよという話になっちゃって。
菌の世界だとか、地球がこうだとか、農業がこうだとか、とにかくすごく話が大きくて、最後には僕がアフリカに行っていたという話をしたら、「よし!一緒にサハラ砂漠を緑にしよう」みたいなね。凄いホラを吹くわけ。
微生物の世界でも、物理学の世界でも、こんなにすごい事をやっている人が、楽しそうに夢を語っている。もうすっかり魅了されて、一緒にやってみたいという事で、この世界に入っちゃった。それまでは、他の仕事をちゃんとしていたんだけどね。

「今アフリカにいるから来い」

大学時代は酪農学科で家畜管理学が専攻。家畜の行動を観察したり、どうしたら家畜を上手に捕まえられるかとか(笑)、どういう環境を作ってあげたらいいかなど、色々勉強させてもらっていたかな。そこで一年休学してアフリカに行ったんです。
当時は昭和47年だったから、まだアフリカが「暗黒大陸」とか言われていた時代です。

なんでアフリカかっていうと、

たまたま姉の旦那さんが越冬隊に行っていて、南極大陸とかヒマラヤとか、山登りの人で、山男仲間がいっぱい姉の家に来るんだよね。酒飲んで海外の話とかを普通にしている訳。だから俺も行きたいなと子どもの頃から思っていたの。たまたま自分をかわいがってくれた人から、「アフリカはいいぞ」という話を聞いていて、高校生の時に、「今度アフリカに行くようなことがあったら、声をかけるよ」と言ってもらった。
それからしばらくして、大学2年ちょうど終わるころかな?エアメールが届いた。「今アフリカにいるから来い」と。その人は約束を守ってくれたんだよね。それを見て、「よし、今だ!」と思って、すぐ休学届を出した。おやじは教師だったんで、休学することはあまり好きじゃなかったんだけど、兄や姉が応援してくれた。お金は、働いてから返すという約束でおやじに貸してもらった。

「生かされて今日を生きる」

アフリカでは何をする訳でもなく、畑を手伝ったり、自分で食べるものは自分で作って、現地の人たちと一緒に暮らしていました。アフリカで感じたことは、「みな自然に生かされている、そのことが喜び」「生きていることが喜び」ということ。お金はあっても、物が無いんだから何も買えない。お金よりも食べ物。生きることの根っこはそこなんだと。彼らは金が無いから不幸かっていうと、ぜんぜんそんなことない。にこにこして幸せそうにしている。お酒飲んで唄って踊って、それだけで、すごく喜んでいるわけね。「生かされて今日を生きる」っていうところにいるんだよね。
だから、例えば子供が病気になって死んだら、もちろん悲しむんだけれど、そのあとはけろっとしいているんだよね。これも「自然の事」という捉え方をしている。こういう世界を見て、お金を持っていても何も役に立たないじゃん。それよりも生きるってことは食べ物。その時、食べ物の大切さってすごく感じたよね。生きている喜び、生かされている喜び、自然界の一部の生き物。他の生き物たちと一緒だよね。そのスタンスはアフリカですごく感じた。やっぱり、これが原点なんだと。

食べものを変えて、うんちを変えれば家畜の健康も環境も変えられる。

その事考えたら、日本に帰って来てから本当に楽だった。あまりにも恵まれすぎ。感覚が麻痺して分からなくなっている危機感はあるよね。
普段の生活をしていると忘れてしまっている。もう何十年も前のことだけど、アフリカで感じたことが、その後の物の感じ方や、自分の将来の方向性を大きく変えたと思う。こんな経験やいろんな縁があって、20年以上前に今の微生物の世界に入っていったんだけれども、僕のフィールドっていうのは、ずばり畜産のうんちの部分。公害化している畜産の糞尿の問題も、食べものを変えて、うんちを変えれば家畜の健康も環境も変えられる。非常に単純な話なんだけれど、そういう取組み。整腸作用のある食べ物でうんちを変える。家畜は体調が良くなる。良くなるといっぱいメリットが出てくる。うんちって臭いだけで家畜にとってストレス。
「家畜は文句言わないから大丈夫」っていう人がいるけど、それはどうかな。「まず人間が24時間臭い牛舎に寝てみろ。臭いっていうのは動物の健康にとって一大事なことなんだ。そんなことわからないなら牛飼い辞めろ!」っていう人がいて。確かにその通りなんだよね。

赤ちゃんのうんちって臭くない。

うんちってすごく面白くって、悪いうんちと良いうんちの違いは?匂いでしょう。健康な赤ちゃんのうんちって臭くないでしょ。悪玉菌って言われているものは悪臭ガスや毒素を出しながら有機物を分解する連中って考えたらいい。それに対し善玉菌と言われるものは生き物にとって有益なものを出しながら分解してくれる。腐敗菌は物を腐らせながら分解するでしょ。その途中で悪臭ガスと毒素をだす。だから体がやっつけられる。
一方で発酵は別だよね。生き物に良い影響を与えるから善玉菌。善玉菌が優勢になっておなかの調子が良くなると悪臭が無くなる。牛の世界でもこういう方向で改善を進めていくと、微生物飼料を導入した牛舎を見たらすぐわかる。嫌な臭いがまったくしないし、牛も気持ちよさそうにリラックスしているからね。

最終的に「うんちが土に還って作物が育つ所まで」、そこまでが僕らの仕事。

ここまでやると、次に畜産の糞尿処理の問題をなんとか解決出来ないかって考えたくなる。毒素の無い状態にして、元の農地に土にして還してあげること。それまでやるのが微生物の仕事であり、僕らの仕事じゃないかって。最終的にうんちが土に還って作物が育つ所まで、そこまでが僕らの仕事。ただ、そこまでやると手間とコストがかかるから、皆やろうとしない。
これって勿体ないって言っているんだよね。

北海道の池田町では町から堆肥舎を借り受け、堆肥を作って町の生きがいセンターに供給、そこで袋詰めにして販売し、生きがいセンターの運営費になっている。お客さんが来たら堆肥センターを見せてあげる。地域循環型畜産、言うだけじゃなくてやってみるのは大事だよね。
自然栽培の側面から見たら、「堆肥を使うなら有機栽培の話でしょう」と思うかもしれないけれど、でもね、放っておいて、悪いうんちがごろごろ転がっていたら環境に悪い訳だし、発酵を利用してうんちの堆肥化がきちんと進んでいけば、最後は土になっていく。

土は地球のお腹

僕は、日本の農業は畜産と畑がセットだと思っている。だって、これだけみんなが畜産物を食べていて、もう否定するわけにはいかないじゃないですか。木村さんと最初に会った時、「なんで堆肥は駄目なの?」って話をしたの。
腐った堆肥、有毒な堆肥は産業廃棄物。でもそれをきちんと発酵処理して土に還元できるのならすごくいい。産業をやるんだったら、循環させて環境負荷を減らし、最後まで責任を持とう。菌を使って土に還元できるなら良い形だねと。僕がやりたいのは「微生物を使って仕事をさせてもらう、そして最後はちゃんと土に還すところまでが仕事」そういう循環できるサイクル。
微生物から見るとヒトの体も地球と一緒。そして「土は地球のお腹なの」 地球に腐ったものを与えちゃいけない。僕はそう思うんだよね。

佐藤隆司(さとうりゅうじ)
1950年、北海道豊富町生まれ。
帯広畜産大学 酪農学科を卒業後、貿易商社などを経て、現職。
株式会社アース技研 代表取締役
趣味は 旅、音楽(聴く・踊る・唄う)、蕎麦打ち、etc
妻、一女。北海道帯広市在住。