農家・生産者の物語
次の10年木村さんと歩んだ道、これからの自然栽培
数十年前から、「農薬ありき」の農業に疑問を持つ農家さんはいた。しかし実際に無農薬栽培を始めるとなると話は別で、至難の業でした。そんな中、映画「奇跡のリンゴ」が公開されて、「無農薬」という言葉が一般化しました。映画公開前の試写室で、当時のJAのお偉いさんが映画会社の方に、映画の内容について怒りの剣幕で、食ってかかっているのを見て、この映画は政治的にも「重大なインパクトなんだな」と再認識したのを覚えています。

木村秋則さんと一緒に農家さんの畑を巡っていたのが、今から20年ほど前のことです。毎週どこかの都市で農業指導や講演会が開催されるので、もう行ったことがない場所がなくなるほど日本中を旅して歩きました。まるで水戸黄門の全国行脚みたいな珍道中でした。
当時、木村さんが声をかけて背中を押した若い農家さん達が、あれから20年経った今、日本の自然栽培の大先輩として活躍しています。中には高い技術で、コンクールを総なめにする生産者まで誕生しました。
当時「時代にもの申す」といった印象だった自然栽培でしたが、今では農水省2050年「みどりの食料システム戦略」のど真ん中で、鍵を握る存在までになりました。おそらく有機農家さんと同等かそれ以上の数の農家さんがいるはずで、当時、少数派であまり注目されていなかった自然栽培が、日本の農業の未来に影響を与える「多数派」になるなんて、当時は誰一人、想像もしていなかったと思います。
これから次の10年も、木村さんが喜ぶ報告がたくさんできるように、仲間や生産者、消費者の皆さんと一緒に駆け抜けていきたい。心からそう願っています。
