ハミング通信

農家・生産者の物語

「奇跡のリンゴ」映画の裏話木村秋則さんとリンゴの保存の秘密

今回は、もう何年も前のことですが、まだ誰にも話したことのない裏話をします。

僕が師と仰ぐ、リンゴの無農薬栽培に世界で初めて成功した木村秋則さんの自伝的映画「奇跡のリンゴ」が公開されたのは2013年6月のことでした。当時、僕もサポートスタッフの一人として映画会社やテレビ局との打ち合わせに同席させていただいていました。

そこで、ずっと不思議に思っていたことがありました。映画公開の前年、企画段階で「せっかくだから出演者の●●さんにも木村さんのリンゴを食べてもらおう」というアイデアが出るたびに、木村さんは「はい、分かりました」とあっさり答えるのです。

でも、リンゴの収穫時期は10月〜11月。番組で実際に食べてもらうのは5月〜6月です。いくら奇跡のリンゴとはいえ、収穫後「半年経過」すれば傷んでしまうのではないか。尊敬する木村先生にそんな質問をするのも失礼と思い、結局聞けずじまいでした。

今になって思うことは、木村さんは自分のリンゴなら「それができる」と最初から分かって答えていたのだということです。無肥料自然栽培のリンゴは、半年経っても腐らない。腐るのではなく、枯れていくように乾燥していくだけなのです。

肥料を使って育てたリンゴは、肥料で不自然に肥大化させたものほど腐りやすい。未分解の有機肥料を使ったものは、さらに腐りやすい。対して自然栽培のリンゴは、ゆっくり時間をかけて自然の摂理で成長し、ある程度時間が経っても品質が変化しにくい。その時の木村さんのあっさりとした「はい、分かりました」という一言に、すべてが込められていたのだと思います。

本当に奥深い自然栽培の世界。農家さんと力を合わせて、木村さんに追いつけ追い越せという気持ちで、自然栽培の魅力を伝え続けてまいります。

人と自然を食でつなぎ、伝える。

読んで、感じて。
次は、食べてみてください。
言葉でわかることには、限界があります。
体で感じることから、始まります。